2015年06月08日

追悼

巨星墜つ。
ポストを開けると御夫人からの手紙が届いていた。訃報でした。
猶予は短いのは聞いていたけど早過ぎです。
この店は多くの有名なテレビ番組(「どっ○の料理ショー」等)や
さまざまな雑誌の取材を断っていたと聞きます。
メディアには出ない、知る人ぞ知る名店でした。
全国、食べ歩いてきましたが、ここまで洗練された究極のスタイルを
呈示した店を知りません。
東京にもこんなに繊細で奥深い味を出すカレー店はありません。
本当にすごい店が福岡に存在したのです。ついこの間まで。

そのヨーロッパの調理技術とインドの調理技術を
見事に組み合わせたカレー、スパイス料理は
唯一無二といえました。
30年以上前の情報もない時代に、理解されるかもわからないインド料理を
福岡で始めたというのは大変な苦労があったはずです。

ある時、GARAMのマスターに凄い人がいると言われ、
連れて行ってもらって本当に良かった。
長年の経験からの集約されたテクニックやこだわりに驚かされた。
そして、このカレーの繊細な味わいは万人に受け入れられる
ものでもないと感じました。迎合しない味です。
食後は時間を割いてくださり、自分のオリジナル料理を理解してもらえるまで
かなりの年月を要したこと等、興味深い話を伺いました。
そして最近の食材の話を生き生きと話されていました。
白いひげをたくわえ、長年の経験が威厳を感じさせる佇まいでした。
最後に店を出る際に握手をして頂いたのですが
分厚い手で力強く、大変勇気づけられたのを覚えています。

それが数カ月後にこのようなことになるとは。
私は福岡に来て年月が浅く、これから通って色んなことを学ばせてもらおう
と思っていたのに10のうち、1も知り得なかった。残念でなりません。
やり残したことはない、満足していると御自分の余命を知りつつ
泰然自若としたさまで構えておられたというのは壮絶です。
ハードワークだったと思います。ゆっくりとお休みください。

どうしても引っかかってしまいます。
本人の御希望もあったのかもしれないが、あまりにひっそりと去って行かれた。
あまり話題にもならず、自分のお客さんからもほとんど話を聞かない。
常連だった人は、味を語り継いでいってほしい。
とにかく、ひっそりし過ぎてるように感じられて少し寂しい・・・

みなさんもテレビ、雑誌、ネット、食ベログ等に左右されず
自分の足と舌で美味しい店、自分の味覚に合った店を探してください。
そういう店は存在します。この店がそうでした。
posted by 孤食のグルメ探求人 CURRY MAZTER D at 22:59| 日記